世界最高峰のミステリー文学賞・ダガー賞で日本人初の快挙、王谷晶『ババヤガの夜』が受賞

2025「ダガー賞」翻訳部門を受賞した『ババヤガの夜』の著者・王谷晶(右)と翻訳者・サム・ベット(左) (C)Isac

【画像】2025「ダガー賞」授賞式の模様
本賞は、1955年に創設された、英国推理作家協会(CWA)が主催する、ミステリー/犯罪小説に贈られる文学賞。翻訳部門は、英国で出版された、英語翻訳作品に対して授与される。
これまでに日本の作品では、2016年に横山秀夫『64(ロクヨン)』(訳:Jonathan Lloyd-Davies)、19年に東野圭吾『新参者』(訳:Giles Murray)、22年に伊坂幸太郎『マリアビートル』(訳:Sam Malissa)が最終候補に選出され、いずれも受賞には至らなかったものの、翻訳ミステリーとして国際的に高く評価された。今年は、『ババヤガの夜』(訳:サム・ベット)と柚木麻子『BUTTER』(訳:ポリー・バートン)の2作が同時にノミネートされていた。
『ババヤガの夜』は、本作は、2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表され、同年10月に単行本化、23年5月に文庫化された。英訳版は、2024年9月にFaber & Faberから刊行された。
喧嘩しか取り柄のない新道依子は、ある日、関東有数の暴力団の屋敷に連れてこられ、組長の一人娘である短大生の送り迎えと護衛を命じられる。気の合わないふたりの奇妙な同居生活のなかで、依子はこの家に隠された、ある秘密に触れていく。物語終盤で明かされる大胆不敵な大仕掛け。繊細かつ哀切に描かれる、女と女の名前のつけられない関係に引き込まれるシスター・バイオレンス・アクション。
ロンドンで開催された授賞式で王谷氏は、「今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています」と率直な心境を語り、「この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました」と翻訳者のサム・ベット氏に感謝を述べた。
ジャンルにとらわれない自身の執筆活動について「曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています」などと語った。以下にスピーチの全文を掲載。
■王谷晶氏のスピーチ全文
まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。
今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりました。
何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。
私はミステリ専門の作家ではありません。さまざまな種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。
この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力があふれている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回いただいた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。Thank you.
■プロフィール
1981年、東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『ババヤガの夜』『君の六月は凍る』『他人屋のゆうれい』『父の回数』、エッセイ集『カラダは私の何なんだ?』『40歳だけど大人になりたい』などがある。
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