サービス業は本当にAIに取って代わられてしまうのか? パセラ社長が語る国内サービス業への危…

NSグループ社長・荻野佳奈子氏 撮影/逢坂聡 (C)oricon ME inc.

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■なぜ? 女子トイレに設置したミネラルウォーターが大好評 “現場の声”から派生した付加価値で他社との差別化に成功
カラオケパセラでは、コロナ禍以前の2019年頃から、利用者の約6割が“カラオケ”を主な目的とせず、「歌わない客」という流れをいち早く捉えていた。もともと同社では、創業当時からボックス内にはバリ島直輸入の素材を用いたアジアンリゾートのインテリアを用い「都会のオアシス」を演出、さらには簡易的なフードメニューではなく高クオリティの料理を提供するなど、単にカラオケを利用するという目的に付加価値を演出している。
こうした「付加価値」をつけていくことに重きを置いた理由について荻野社長は「そうせざるを得なかったんです」と内情を明かす。
「カラオケ業界は、いまでこそクリーンなイメージを持つ方もいましたが、当時はいわゆる、仕事はきついし、お店は汚いし、サービスレベルも低い、ご飯もマズイというイメージでした。終電がなくなって仕方ないから行くような(笑)。そこで父(同社会長・荻野勝朗氏)が、ファミレス並にはおいしい食事を、ビジネスホテルぐらいの居心地の良さを提供しようというところから始まりました。従来のカラオケボックスとの差別化を図っていくなかで、少しずつ支持していただけるようになっていったんです」(荻野社長)。
さらにもう一つ、カラオケの利益構造上の問題も、パセラが他のカラオケとは違う方向性に進む理由となったようだ。
「カラオケはどんどん新しい機械を入れていくというビジネス構造上、初期投資が非常にかかります。とても参入しづらい業界であり、最終的には大手しか残っていかない業界なんですよね。そのなかで私たちがどう戦っていくかと考えたとき、強者とは同じ戦い方はできない。2年ごとに300万円の最新機種を永年で買い続けるビジネスは無理なんです」(荻野社長)。
だからこそ、各店舗の店長クラスに裁量を持たせて、さまざまなアイデアを募るような仕組みを試みた。自らが一国一城の主のように、店舗に付加価値をつけていくための施策を社員たちが考え実行するようになる。そんな中から生まれたのが、現在パセラで人気になっている「推し会」や「ママ会」の原点になった「勝手にバースデープラン」や、子連れ客への徹底的なCS(顧客満足度)に特化した施策だった。
このような取り組みにより、“歌わないカラオケボックスのパセラ”というイメージが浸透。どれも、パセラを利用する客からの声を現場のスタッフがくみ上げて、それを元に「付加価値」を提供してヒット企画を生み出したのだ。
「すごくシンプルなことなのですが、私たちはお客さまが教えてくれたことを丁寧にキャッチアップしただけなんです。いい意味で、違和感のある使い方をされたお客さまがいた際には『なぜうちを利用してくださったのでしょうか?』と問いかける。もともと『何か迷ったことがあったらお客さまに聞け』という方針なんです。もちろん他店でしたら『そこにあったから』『安かったから』というのも立派な動機なのですが、『なぜパセラだったのか』というところから、次に繋げていくというのは、うちのような立ち位置の企業にとっては、とても大事なポイントだと思います」(荻野社長)。
ユーザー目線から発案された、他のカラオケボックスとは異なる「付加価値」の追求――。因みにパセラの一部店舗では、女性客のトイレにミネラルウォーターの無料サービスを展開し好評を得ている。これは接待や合コンなどで利用した際に、チェーサー代わりの水を女性がボックス内で飲むと、場の雰囲気に文字通り水を差してしまう…その為、あえてトイレに設置しているのだという。このような利用客への心遣いや配慮は“現場”からの発想でしか生まれない。現場の声を余さずピックアップしてきたことが、現在のパセラの快進撃に繋がっているのだ。
■社員への「推し活連休」の実施…ユニークな福利厚生の真意とは?「負い目をもって有給を取ってほしくない」
さまざまな施策を打ち出し続けている同社だが、福利厚生面でも先鋭的な制度を打ち出している。それが推し活連休(全国ツアー遠征連休制度)だ。
「2023年に私が社長に就任しているのですが、すでに2019年ごろから同制度はありました。元々『エブリイヤー5連休制度(EY5)』という名称だったんです。当時は“推し活”に特化したものではなく、とにかく『5連休を取得しなさい』というもので、よくある会社の制度にしていたんです。でもなかなか社内に浸透していなくて、『推し活でもなんでもいいから休もうよ!』という形で表現するようになったんです。もちろん“推し”がいない人もいますが、でも表現を変えれば家族でも子どもでも、そのために時間を作れば“推し活”なわけです。“推し活連休”という言葉を使うようになってから少しずつ浸透していきました。取得率も向上してきています」(荻野社長)。
2019年当時は、人事部の責任者を務めていた荻野社長は、ES(従業員満足度)の向上がCSに直結するという強い信念を持っており、会社の福利厚生に対しても、さまざまな提案を行っていったという。そんななか、2023年社長に就任することになる。
「推し活連休もそうですが、いろいろなコーポレートPRをするうえで、先代の社長は『若者向けのビジネスに70代の人間が表に出るというのはどうなのか』とあまり積極的ではなかったんです。当時コロナ禍明けのタイミングで、ベースアップや賃金体制など、私は人事の責任だったので、今後の人材獲得などの意味を込めて『自ら社長となって発信する役割を担わせてください』と直訴したんです」(荻野社長)。
社長就任後は、さらに福利厚生には意識を強めた。男性の育児休暇率は100パーセントを達成。推し活連休についても取得率は、高い水準に達している。
「自分が社長という肩書を持つとき、ビジネスパーソンとしての実力はまったく父にはかなわない。いまある主力事業の95パーセントは父が作ったものです。なにか大きな実績を残していまの立場にいるわけじゃないというのは、誰しも分かっていること。じゃあ自分に何が出来るのかと考えたとき、まずは従業員の労働環境をしっかり整えることだと思ったんです。みんなが困っていることにしっかり共感することが大前提だと。それがいい人材の確保に繋がっていくと思ったんです」(荻野社長)。
とは言いつつも、サービス業で長期に渡る休暇を取ることは、現実的にはなかなか難しい。他の同僚への負い目を感じつつ……という人も多いのではないか。
「もちろん、いろいろな働き方があります。しっかりと休みを取る人もいれば、最低限でいいという人もいます。そこは調整をしながら、負い目をを持たせないようにしていくことが大切だな思いますし、そのような施策は今後も考えていきたいと思っています」(荻野社長)。
■インバウンド需要で改めて見えた、AIには再現不可な世界最高峰の“誇り高い”サービス業
現在、全国に多数の外国人観光客が訪れ、インバウンド需要が大幅に伸長している。そのなかで、訪日外国人が異口同音に話すのは「サービスの質の高さ」だ。一方で少子高齢化による、サービス業従事者の減少などで、その質が問われることもしばしば。従業員の福利厚生と、きめ細やかなサービス、さらにAIロボットの導入など…、パセラでは、将来どのようなバランスで事業を行っていこうと考えているのだろうか――。
「あえて言いますが、カラオケ“なんて”まさに装置産業なので、本当に人がいなくても成り立つ業種だと思うんです。競合他社さんのお店にいくと、本当にシステム化されています。入室したら部屋番号は出ますし、飲み物もフリードリンクで取りに行き、食事もデリバリー機械で運んできてくれる。盗難を防止する最低人数でオペレートできるんです」(荻野社長)。
まさにAIを導入することで、少人数化が図っていける産業だという。しかも、面倒なコミュニケーションがなくなることで、自然減していく可能性のあるカラオケ人口にも歯止めが利くような合理的な仕組みだと荻野社長は言う。実際にパセラでも、自動精算機を入れる店舗が増え、同様のリクエストも多いという。しかし一方で、サービス業で働くことの矜持を蔑ろにしてはならない想いを人一倍持ち合わせている。
「人材がオペレーション機能の役割を果たすだけでは、そこに配置される意味がなくなってしまう。おこがましいですが、私たちはサービス業というものは、一生ものの格好いい仕事をしているんだよと誇れるようにならないといけないと思っているんです。だからこそ“付加価値型”の立ち位置を取らせていただいています」(荻野社長)。
“歌うこと”に特化したユーザーであれば、より自動化されたカラオケボックスで時間を過ごせばいい。しかしパセラでは「カラオケに行く」という目的ではなく「パセラに行く」という動機で選んでもらうことが大切だと力説する。
「NSグループ(パセラ)では、カラオケのような装置産業であっても、完全な自動化や効率化はできないサービスを提供していくことを大切にしています。もちろん効率化できるところはAIに頼りつつ、AIでは再現できない“人だからできる価値”を提供し続けることが活きる道だと思っています」(荻野社長)。
同社が目指すのは、単なる機能としての消費ではなく『誰かと特別な時間を過ごしたい』というときに選ばれる場所。時代の変化を意識し福利厚生にも取り入れつつ、「お客さまにとって、ごく短い余暇の時間であっても、より笑顔があふれる時間を楽しめたね」と笑顔で帰ってもらう――。そんな「誇りを持てるサービス業に」という合言葉を胸に躍進を続ける。
(文/磯部正和)
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