苦いイメージを払拭した社外秘の味…”アロエ=美容・健康”をいかに決定付けたのか? 発売30…

歴代の『森永アロエヨーグルト』パッケージ

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■「アロエを食す」までに苦戦も、苦いイメージを払拭した社外秘の味
同社がアロエに注目したのは、1990年代。ナタデココブームが下火となり、それに代わる新しい素材を使ったヨーグルトの開発が社内のミッションとして掲げられていた。“食べたことがない”“食感が面白い”“話題性がある”が新素材の条件で、こんにゃくやタピオカ、ジンジャー、海藻、お米など、いろいろな候補が挙がった中、それまで食用のイメージがなかった“アロエ”が選ばれた。
「日本でのアロエへのイメージは火傷に塗るとか石鹸とか、食用ではないイメージが強かったのですが、当時からナチュラル志向で感度の高い女性には、ビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素が入っていることから、アロエのシロップ漬けを食べている方もいました。そういった美容や健康に感度の高い女性のために、“食べるコスメ”というコンセプトでアロエヨーグルトの開発を始めました」
問題は“苦い”イメージのあるアロエの味を、いかに払拭していくかだった。
「苦いイメージを作っていたのは、観葉植物として一般的な家庭にあるキダチアロエでした。ヨーグルトに入っているのは、それとは異なる『アロエベラ』という品種です。無味無臭でアロエの食感だけを楽しめるので、それをシロップで味付けして、今のアロエヨーグルトの味わいを完成させていきました」
同商品のアロエは爽やかな甘さがあり、シロップがヨーグルトと合わさることで定番の味になる。“南国風の味付け”と表現されるが、どのように味付けしているかは、どこにも明かしていない企業秘密というから驚きだ。
「アロエの味付けは、コラボ商品等で協力してくださる会社さんにも明かしていない、社外秘の味です。他社さんからアロエヨーグルトの関連商品は多数出ていますが、なかなか弊社の味に似せることは難しい印象です。言える範囲で申し上げると、アロエをより苦いイメージがない状態で食べていただくために、あるフルーツの風味をプラスして“南国風の味付け”にたどり着いています」と鈴木さん。
「他にも、味の構成としてはヨーグルトが大きな役割を果たしています。アロエの味わいを邪魔しないように、乳酸菌の発酵臭を少し抑えたヨーグルトベースを使っています。ヨーグルトの酸味も抑えることで、アロエに付けられている南国風の味付けと食感を最大限楽しめるような工夫をしています。撥水加工の蓋を使用して、食べる時に『ヨーグルトが蓋についてしまう』等のストレスもなくしていますし、アロエが沈まないようにヨーグルトの粘度も工夫して、アロエが均等に配置されるようにしています」
こうした工夫により、同商品は累計販売数66億個のヒット商品に。発売した当時のヨーグルトの市場規模は1600億円程度だったが、徐々に拡大し、現在5000億円程度の規模まで広がりを見せている。
「94年当時は、プレーンヨーグルトが市場の主流で、甘いものやフルーツが入ったヨーグルトはデザートとして食べるのが一般的だったので、本当に市場のボリュームが小さかったんです。そこに弊社がアロエヨーグルトを出したことで、デザートヨーグルトとして美味しいうえに、ヘルシーな素材で、新しいヨーグルトの食事シーンを提案することができたと自負しています。以降、ヨーグルトのジャンルがさらに広がり、市場全体の規模も伸びていきました」
■「アロエ=美容・健康を徹底的に守り切った」”食べるコスメ”の浸透が爆発的ヒットに起因
とはいえ発売当初、アロエを食すことには高いハードルがあった。発売したのは、新商品の発売時期から大きく外れた94年12月。社内でも「こんなの売れるか!」と批判的な声があがるなかで、いかに状況を打破していったのか。鈴木さんは、「アロエ=美容、健康」のイメージを徹底的に守り切ったことに勝因があった」と振り返る。
「初めてテレビCMを打ったのが、発売から20ヵ月経った時でした。発売当初は新しい商品なのにCMもない、どんな商品かもわからない…。お客様にとっては“得体の知れないもの”を食べることになる。これが最初の課題でした。当初はSNSもなく、口コミだけが頼りです。だからこそ“食べるコスメ”であるという商品イメージに徹底的にこだわりました。
パッケージに緑を使うことに対して、社内で『なぜ緑なんだ』『美味しそうに見えない』と声があがったこともありました。しかし、アロエのみずみずしい健康的なイメージを伝えるためには外せないと貫き通したと聞いています。フルーツヨーグルトはデザートであるという認識を崩し、美容や健康のためにヨーグルトを食べる“新しい価値観を作る挑戦”でもありした。美味しさもないとお客さまはついてこないので、健康と美味しさをしっかり両立させたことで、発売当初は1日2~3万個の売上でしたが、翌年には1日平均10万個の販売を達成し、フルーツヨーグルト市場のトップをとることができました」
■コスパに寄せず”美味しい”を最優先に…節目の年にリブランディングを決意
今では一般的な考え方となった「美容・健康のためにヨーグルトを食べる」価値観を醸成してきた同商品。一方で、ヨーグルト商品の多様化によって近年苦戦を強いられている現状がある。美容・健康の両条件を満たす商品が多数ある、今の状況をどう捉えているのか?
「ヨーグルトジャンルに限らず嗜好品が溢れている現状では、美味しさと健康といったアロヨーグルトが持っていた価値が相対的にちょっと弱く見えてしまう。それがここ数年のアロエヨーグルトの現状です」と鈴木さん。
確かにコスパの良さを考えて、4個入りパックを選ぶ人もいる。一方で、アロエヨーグルトは2個入りまたは個食タイプで売られており、ヨーグルトの陳列棚では珍しい商品だと言える。
「4個パックの他商品と比べた時に、どうしても1個あたりの値段が高くなってしまいます。ですが、その分美味しいし、食べ応えはある。これをいち早く証明するべきだと考えました。アロエを大粒にしたり、15%増量したり、様々なアロエの食感を楽しめるよう種類を展開し、4個パックのヨーグルトでは味わえない美味しさや食べ応えにパワーアップさせています。価格改定やリニューアルを重ねるなかで、コスパに寄ってしまった時期もあったのですが、今はそこに真正面から対抗するよりも、自分へのご褒美などで食べてもらう方向に、美味しさや価値を高めて挑んでいく。これがアロエヨーグルトの今のステージだと認識しています」
発売30周年を機に、同商品のリブランディングも発表された。「今回は『いいアロエは、いい畑から。』というテーマでリブランディングしました。丁寧に作られていて体に良さそうという部分をさらに強調し、美味しくて健康にいいというイメージがあった森永アロエヨーグルトの価値を現代でも再認識していただきたいというのが今回のリブランディングの狙いです」。
アロエを使った商品は多数あるが、「素材の魅力を伝えるのに最も適しているのは、『森永アロエヨーグルト』しかないと思って取り組んでいます」と今後を見据える鈴木さん。
「甘いものを毎日食べるのは罪悪感が伴いますが、アロエヨーグルトなら毎日食べても嫌じゃないよねと。食べ終わった時の満足感も、価値のひとつだと考えます。デイリーで楽しんでいただける商品として、自分へのご褒美に食べてもらえる商品として、お客様への認知をしっかりとっていきたいです。新しいお客さまを振り向かせるために、「アロエって面白そうだな」と思ってもらえるような施策を、今春以降は進めていく予定です」
PROFILE/鈴木優太
2012年、森永乳業入社。20年よりマーケティング統括部。22年よりヨーグルト・デザート商品のマーケティングを担当。
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