山中瑶子監督「第6回大島渚賞」受賞に感涙 「社会を転覆させる映画を作りたい」と決意新たに

「第6回大島渚賞」山中瑶子監督が受賞

【画像】「第6回大島渚賞」授賞式のそのほかの写真
今回の審査講評として、黒沢監督は「坂本龍一さんがいらっしゃらなくなって、(審査員の)荒木さんと2人で何とか相応しい作品をいろいろと観ていますが、正直なかなか簡単には出会えない。今年も大変でした」と振り返り、「今の日本の若い監督は、自分のよく知っている身の回りのこと、自分の心の中に湧き上がることを映画にすることにつけては、ものすごい力を発揮する方が多いが、それだけでは大島渚の名に値しない、というこの賞のハードルを作っています。少しでも自分の世界の外側に飛び出し、それを壊してみよう、そういう思考を感じる映画はないものかと。やっと巡り会えたと思えたのが『ナミビアの砂漠』です」と説明。
「この映画は、途中までは主人公が狭い世界だけに生きていて袋小路に陥ってしまうのですが、後半のある所から、ふっと客観的な視点と、それまでの小さな世界を壊そうという意図を感じて、僕はいたく感銘を受けました」と絶賛し、「この先、全く新しい自分自身も知らない世界へ風穴を開けてくれる、そんな映画を作ってくれるのではないかと期待を持ちました」「結論がどうなろうと、知っている世界を壊して少しでも外に出て行こうとする、それを表現するのに映画は本当に強い力を持っている、と証明した監督こそが大島渚です。山中監督の『ナミビアの砂漠』は正に今年の受賞者に相応しいと思いました。おめでとうございます」と山中監督を讃えた。
プレゼンテーターとして登壇した大島新監督は「山中監督はまさにオリジナリティの塊のような監督で、よくこんな事を思いつくな、よくこんなせりふを考えつくなと本当に感服しておりました。それだけならともかく、それをきっちり映像に落とし込んで、しっかりと面白い作品に仕上げていることが素晴らしいなと思います」と賞賛。「これから海外にどんどん出ていく飛び抜けた才能だと思いますので、大島渚賞に山中監督が選ばれて、(大島渚監督の)家族として、大島プロダクションの代表としてとてもうれしく思います」と、大島家を代表しての思いを語った。
記念品として、大島渚監督が愛用していたというモンブランのペンを贈呈。「父はとにかく“物を書いている人”というイメージ。原稿やシナリオを書いている姿は子ども心にも近寄り難く緊張したものでした」とエピソードを披露した。
山中監督は目にうっすらと涙を浮かべ、「普段はこういう事で泣かないのですが、泣いてしまいました。身に余るうれしい賞をいただけて恐縮しております。本当に関わってくださった皆様には感謝しています」と謝辞を述べ、「1作目の『あみこ』でPFFに見つけてもらった自負があるので、またこうして祝っていただけたことがうれしいのと、(審査員長をつとめた)坂本龍一さんにもお世話になったので、映画を観てほしかったなという気持ちもあります」と、ときどき声を震わせながら受賞の喜びを語った。
さらに、「大島渚監督は、すごく時代と社会を撹拌して転覆させるような映画を作られてきた方で尊敬しているので、身が引き締まる思いで、わたしもそういった映画をつくりたい。いま一つ企画があり、社会を転覆させる映画を作りたいと思っています!」と最後は強い意志を込めた言葉で締めくくった。
■過去の受賞者
第1回:小田香『セノーテ』
第2回:該当者なし
第3回:藤元明緒『海辺の彼女たち』
第4回:山崎樹一郎(※崎=たつさき)『やまぶき』
第5回:工藤将亮『遠いところ』
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