「恐怖で体が動かないっ…！」理解が進まない“子ども同士の性被害” 実体験を元にした漫画で発信「“嫌だ”から先に進む知識がないんです」｜エンタメニュース

「恐怖で体が動かないっ…！」理解が進まない“子ども同士の性被害” 実体験を元にした漫画で発…

2025/03/04 06:00

『10歳で性被害にあいました誰にも相談できない』（ちくまサラ著／KADOKAWA）

　「幼い子ども同士の性被害」。現実に存在することを誰もが知っていながら、まだまだ理解度の低いこの問題を、漫画という表現で発信する『10歳で性被害にあいました誰にも相談できない』(KADOKAWA)が話題だ。自身の実体験を元にしつつも、大人となり、親、教師、加害者となった子どもなど様々な観点を得て、「性被害に悩んでいる子どもがなぜ大人に相談できないのか?」について丁寧に描き、考えるきっかけを与えてくれる一作。「自分の感覚やものさしだけで子を見ていないか?」と自戒を込めて語る著者のちくまサラさんに話を聞いた。

【画像】「恐怖で体が動かない…！」小学4年生のなるみに降りかかる性被害

■『10歳で性被害にあいました誰にも相談できない』ちくまサラさんインタビュー

――『10歳で性被害にあいました誰にも相談できない』というタイトルに衝撃を受けました。この作品が生まれるきっかけを教えて下さい。

【ちくまサラさん】ありがとうございます。もともとは自身のブログで「10歳で性被害に遭った話」という実録漫画を描いたことがきっかけです。世の中の、子どもの性教育や性犯罪に対する理解がまだ低いと感じ、自分自身の実体験を描くことで性被害の現実と性教育の大切さを発信しようと考えました。その漫画を読んでくださった編集部の方にお声がけいただき、フィクションストーリーを加えて書籍という形で出させていただくことになりました。

――小学4年生のなるみは学校で6年生のゲンシくんの行動に悩まされます。スカートをめくったり、下品なことを言ったり……。一見些細な行動に思えますが、当事者にすれば、すごく嫌な経験のはずです。ゲンシくんに対するなるみちゃんの心情はどのようなものなのでしょうか。

【ちくまサラさん】「されたくない。けど、どうしたらいいかわからない」「抵抗したらどうなるかわからないから怖い」「誰に何て言って相談したらいいかわからない」「相談するのが恥ずかしいし、言ったらどうなるかわからないから不安」などです。「嫌だ」という感覚はしっかりとあるものの、わからないことだらけで、「嫌だ」から先に進む知識がないんです。

――大人対子どもではなく、子ども同士のトラブルということで、どちらも保護すべき年齢ということを考えると周囲の大人の対応は難しくなります。ゲンシくんの担任・保波先生も男性教師の物言いにイライラしながらもゲンシくんを注意深く見守っていました。保波先生の対応・心情についてはどうお考えですか？

【ちくまサラさん】ゲンシについてはなんとかしないといけないし、男性教員たちの態度にもやきもきしているものの、自身の経験や知識不足から、どうしたらいいのかわからない状態ですね。また「ゲンシくんは女性のいうことを聞かないから」と諦めている部分もあります。

――なるみちゃんの母・みどりも、娘を守るため行動しますが、娘にとって最善か自信が持てずにいます。母娘の関係性、みどりのとった行動を通じて、描きたかったことは？

【ちくまサラさん】子のためを思ってしたことが、その子にとってはNG行動だった…という経験は、子どもに関わっていると大なり小なり経験します。今回は「繊細な子と大雑把な親」というパターンで描きましたが、全ての親子関係で起こりうることだと思っています。子と向き合う時は、自分の感覚やものさしだけで子を見ていないか?子の気持ちを十分に理解できているか?と立ち止まることが大切だと自戒をこめて描きました。

――本作で加害者として描かれるゲンシくんですが、家庭内で性的な情報があふれているなど、大人から悪影響を与えられている被害者としての側面も見えてきますね。

【ちくまサラさん】被害者目線で見たときに加害者はどんな事情があろうが加害者でしかなく、私自身も加害者のことは大嫌いでひたすら憎かったです。しかし性加害について調べていくと、幼い子どもが起こす性加害は周りの大人の環境に影響されていたり、加害者自身が性被害者であることが多いことを知り、ある意味ではゲンシも被害者であると思いながら描きました。もちろん、だからといって性加害は絶対に許されることではありませんが、加害者を叩くだけではなく、加害者を生まないためにはどうすればいいか?という視点を社会全体で持つことが大切だと思っています。