第97回アカデミー賞6部門ノミネート『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督&主演マ…

2025/03/01 16:30 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

映画『ANORA アノーラ』(公開中)場面写真(C)2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

 現地時間3月2日(日本時間3日)に授賞式を控える「第97回アカデミー賞」に、作品賞をはじめ、主演女優賞(マイキー・マディソン)、助演男優賞(ユーリー・ボリソフ)、監督賞(ショーン・ベイカー)、脚本賞(ショーン・ベイカー)、編集賞の6部門にノミネートされた『ANORA アノーラ』(公開中)。作品賞の最有力との呼び声高い注目作だ。

『ANORA アノーラ』フォトギャラリー

■ストーリー

 NYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける――。身分違いの恋という古典的な題材を、21世紀風にリアルに描いた、現代のアンチ・シンデレラストーリー。

■ショーン・ベイカー監督の作家性と手腕

 「第77回カンヌ国際映画祭」で最高賞のパルムドールを受賞。インディーズ映画ゆえに全米公開時は公開規模はわずか5館。そこから絶賛の声が相次ぎ、1500館にまで拡大された。映画好きで知られるオバマ元大統領が毎年年末に発表する「今年の映画10本」にも選ばれた。

 賞レースでも多くのノミネートと受賞を重ね、オスカーの重要指標である「第30回クリティクス・チョイス・アワード」で作品賞、「第77回全米監督協会賞」で長編映画監督賞、「第36回米製作者組合賞」で作品賞、「第77回全米脚本家組合賞」で脚本賞を受賞し、アカデミー賞作品賞最有力候補と目されている。

 監督のショーン・ベイカーは、全篇iPhoneで撮影した『タンジェリン』(2015年)、サブプライム住宅ローン危機の余波に苦しむ貧困層の人々を6歳の主人公の視点から描写した『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17年)など、アメリカ社会の「声なき声」をすくいあげ、性産業従事者やマイノリティの等身大の生きざまを、丁寧かつユーモラスに描写し、世界中で称賛を浴びてきた。

 どの作品においても、「観客に楽しんでもらうのと同時に、映画が扱う題材について議論してもらうことを念頭において、作品を作っている」というショーン・ベイカー監督。長編8作目となる『ANORA アノーラ』では、セックス、美、富というパワーゲームの中で利用されながらも、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘するアノーラの等身大の生きざまを、丁寧かつユーモアを交えながら真摯(しんし)な眼差しで描いている。

 ショーン・ベイカー監督の7年ぶり3度目のプロモーション来日も決定。プロデューサーでパートナーでもあるサマンサ・クアンとともに、8日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで舞台あいさつ、新宿ピカデリーでQ&Aを実施する予定だ(どちらもチケット販売中、3月1日午後3時時点)。

■新星マイキー・マディソン、賞レースの注目の的に

 主人公アノーラ、通称アニーに抜てきされたのは、新星マイキー・マディソン。マイキーは1999年3月25日生まれの25歳。2013年短編映画でデビュー。その後、テレビシリーズ『ベター・シングス』(16~22年)での演技で一定の評価を得ていたものの、ドラマシリーズや映画への端役が続いていた。しかし、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)で演じた火炎放射器で黒焦げにされるマンソン・ファミリーのスーザン・アトキンス役と、『スクリーム』(22年)で頭に火をつけられるティーン・エイジャー、アンバーの演技がショーン・ベイカー監督の目に留まった。

 劇場で『スクリーム』を観てすぐにマイキーのエージェントに連絡をとったという監督は、コーヒー・ミーティングをセッティング。自身のパートナーでもある本作共同プロデューサーのサマンサ・クワンと飼い犬2匹も同席し、マイキーと初対面した。この段階では脚本もできていなかったが、企画を一通り話した。マイキーがアノーラというキャラクターに対して徹底的に向き合い、準備をしてくれるだろうと期待、確信した監督は、最初のインスピレーション通り、主人公アノーラ役にマイキーを起用した。

 ミーティングから約1年後に撮影はスタートするが、マイキーは撮入までの1年間、役柄に関するリサーチやトレーニングはもちろん、積極的に『ANORAアノーラ』の企画にかかわり、脚本開発にも協力し、強固な信頼関係を築いた上で撮影を迎えることができたそうだ。ポールダンスや訛りなど、役の外側の準備はもちろん、自らアノーラが住んでいるロシア人街ブライトン・ビーチに住まいを移したり、ストリップ・クラブに通ってダンサーからしきたりを学んだり、アノーラの内面も理解して演じるために、時間をかけ、全身全霊でこの役に臨んだ。映画初主演作でオスカー主演女優賞にノミネートされたマイキーの受賞にも期待がかかる。
ORICON NEWS

エンタメ

注目の情報