4500年前に建造「クフ王の船」展示 大エジプト博物館が開館

2025/11/02 08:31 

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 日本の支援で建設された大エジプト博物館(GEM)が1日、エジプトの首都カイロ近郊で正式にオープンし、現地で式典が開かれた。

 収蔵する遺物は約10万点に上り、単一文明を扱う博物館としては世界最大級になる。ツタンカーメンの黄金のマスクなど、古代エジプトを代表する遺物が展示され、エジプト観光の新たな拠点として注目を集めそうだ。

 GEMは、ギザの3大ピラミッドのそばにあり、敷地は東京ドームの約10倍の47万平方メートル。展示面積は約5万平方メートルで、大英博物館(約5・7万平方メートル)に匹敵する。

 2012年に建設が始まったが、パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘などにより、開館がたびたび延期されていた。

 館内には古代エジプト文明を時代・テーマ別に紹介する常設展に加え、ツタンカーメンの秘宝を集めた専用展示室を設置。エジプト各地の博物館で分散して展示していた遺物5000点以上を集め、日本語の解説とともに公開している。

 また、約4500年前に建造された2隻のクフ王の船も展示している。このうち、東日本国際大の吉村作治総長らが復元を進めている「第2の太陽の船」は、修復作業の様子を見学できる。

 開館セレモニーには、アラブ諸国などから多くの要人が駆けつけ、日本からは三笠宮家の彬子さまが出席された。

 古代エジプトをモチーフにした無人機(ドローン)による光のショーやオーケストラによる演奏、エジプトの伝統舞踊タンヌーラなどが披露され、ピラミッド上空に花火が打ち上げられた。シシ大統領は「多くの世界的な企業の協力で(開館を)達成できた。大部分を支援してくれたのは友好国の日本であることも忘れてはならない」とスピーチし、日本の協力に謝意を示した。

 日本はGEMに842億円の円借款を行ったうえ、国際協力機構(JICA)が多数の専門家を派遣し、遺物の保存・修復や移送などを支援。2000人を超えるエジプト人の技術者も育成した。

 JICAの田中明彦理事長は10月31日、カイロで記者会見し、「文化財の保護という普遍的な事業で協力できるのは、国際社会で日本の立場を強化する上でも重要なこと。人類史に興味を持つ人が必ず行きたいと思うような博物館に育ってほしい」と語った。

 2、3日は来賓による観覧が行われ、一般観光客は4日から入場できる。チケットはウェブサイトから購入でき、日本人を含む外国人の入場料は大人1450エジプトポンド(約4700円)、子供730エジプトポンド(約2300円)。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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