南部で緊張続くシリア、治安は安定するか イスラエルと「停戦合意」

2025/07/19 17:58 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 バラック駐トルコ米大使は19日、X(ツイッター)で、イスラエルとシリアが停戦することで合意したと明らかにした。シリアでは13日以降、イスラム教多数派スンニ派のベドウィン(遊牧民)と少数派ドルーズ派の住民との間で武力衝突が起き、イスラエルが軍事介入を強めていた。シリア国内の衝突が終息し、治安の安定化に向かうのかが焦点となる。

 武力衝突があったのは、シリア南部スワイダ県。AP通信などによると、スンニ派中心の暫定政権は鎮圧のために治安部隊を送ったが、衝突は収まらず、少なくとも8万人が避難した。在英人権団体「シリア人権観測所」のまとめでは、衝突による死者は少なくとも718人に上る。

 イスラエルは武力衝突が始まったのを受け、自国にも居住しているドルーズ派の「保護」を口実に、暫定政権の治安部隊などに対して空爆を実施。16日には首都ダマスカスの国防省も攻撃しており、緊張が高まっていた。

 ロイター通信などによると、今回の停戦合意は米国やトルコなどの周辺国の支援により成立した。イスラエルは2日間に限り、暫定政権の治安部隊がスワイダ県に展開することを認めたという。イスラエルのネタニヤフ首相は17日、シリア南部を「非軍事化」すべきだと主張し、治安部隊がシリア南部に展開すれば軍事行動を取ると述べていた。

 シリア暫定政権のシャラア大統領は19日、すべての当事者に対して停戦を守るように要求。停戦違反は「明確な主権侵害になる」と警告した。

 シリアでは昨年12月、アサド政権が崩壊し、スンニ派中心の反体制派による暫定政権が発足した。だが、暫定政権を警戒するイスラエルは混乱に乗じて軍の部隊をシリア国内に進駐させたうえ、シリアの軍事基地などを標的に空爆を繰り返してきた。一方、イスラエルの同盟国である米国は暫定政権の統治を後押ししており、シリア情勢を巡る足並みはそろっていない。【金子淳、エルサレム松岡大地】

毎日新聞

国際

国際一覧>

注目の情報