米・サウジ側とイラン、対立先鋭化 偶発的な衝突も懸念

2019/05/15 21:46 

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 【カイロ篠田航一】国際的な原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡付近で起きたサウジアラビアのタンカーに対する「破壊工作」などを巡り、イランと米国やその同盟国であるサウジアラビアとの対立が先鋭化している。イランのロウハニ大統領は今月8日、イランと主要6カ国(米英仏独露中)が2015年に結んだ「核合意」の履行の一部停止を表明。既に昨年に核合意から離脱した米国との緊張状態が続いており、偶発的な衝突も懸念されている。

 サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は14日、国内を東西に走る石油パイプラインの2カ所が爆発物を積んだ小型無人機ドローンの攻撃を受けたと発表した。国営サウジ通信などによると、原油生産に影響はないが、パイプラインは操業を中断。イランが支援する隣国イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシは同日、系列テレビ局を通じて「無人機7機でサウジを攻撃した」と「戦果」を強調。これに対しファリハ氏は「イランの支援を受けるフーシのようなテロ組織と対決することの重要性を改めて証明した」と述べた。

 イランの関与が指摘される攻撃は12日にも発生している。アラブ首長国連邦(UAE)の沖合でサウジのタンカー2隻を含む4隻が何者かに攻撃され、船体が損傷した。「攻撃」内容の詳細は不明だが、トランプ米大統領は13日、「イランが何らかの行動に出れば深刻な問題になる」とイランの関与を示唆。一方、イランのザリフ外相は14日、訪問先のインドで「緊張を高めるため、何者かがこうした動きに出ると予測していた」と関与を否定した。

 AP通信によると、ハント英外相は13日、「双方が意図せずとも結果として衝突に発展する危険があると大変危惧している」と発言し、偶発的衝突の可能性を警告した。

 米国とイランの関係悪化で、米国務省は15日、イラン軍やその関係組織がイラクやシリアなどの中東地域で米国人を対象としたテロ攻撃や誘拐を実行する可能性があるとして、イラクにある大使館などに勤務する職員の一部に退避命令を出した。米国市民のイラク渡航も制限する。ドイツも同日、イラクで実施している兵士の訓練の停止を発表した。

 一方、軍事的緊張は互いに圧力をかけ合う「心理戦」の様相も呈している。ボルトン米大統領補佐官は5日、「イラン指導部に明確なメッセージを送る」として原子力空母エーブラハム・リンカーンの中東派遣を発表したが、イラン最高安全保障委員会の報道官は「空母は既に以前から派遣が決まっていた通常配備」と主張する。実際に米国による中東での空母配備は珍しくない。

 ロイター通信によると、イラン最高指導者ハメネイ師も14日、米国との交渉は「毒」だと述べて圧力を強める米国に譲歩することを拒否しつつ、「米国と戦争することはない。それは米国の利益にもならない」と述べ、衝突回避に向けた姿勢も示している。

毎日新聞

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