韓国、北朝鮮の食糧支援めど立たず 文氏は前向きもミサイル発射で国内に慎重論

2019/05/14 19:29 

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 【ソウル渋江千春】米朝の非核化交渉に進展が見られない状況で、北朝鮮の食糧支援を巡っても韓国が難しい立場に追い込まれている。食糧支援は人道的支援と位置づけられるため経済制裁の影響は受けないが、4日と9日に相次いだミサイル発射を受けて韓国内でも慎重論が浮上している。南北対話の糸口を見つけたい文在寅(ムン・ジェイン)政権は前向きな姿勢を崩していないが、実現のめどは立っていない。

 文大統領は13日、訪韓中の国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長と約1時間面談、北朝鮮への食糧支援などについて協議した。文氏は「(米国の)トランプ大統領が北朝鮮に対する人道的食糧支援を全面的に支持すると話した」と意欲を示した。青瓦台(大統領府)関係者によると、当初は鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長が会う予定だったが、文氏の判断で直接会うことになったという。

 ビーズリー事務局長は今月3日に公表された国連食糧農業機関(FAO)との共同調査による報告書の内容を説明。報告書は北朝鮮の2018年の農作物生産量は推定約490万トンで、過去10年で最悪の水準と指摘。既に提供された援助などを除き、約136万トンの食糧が不足しており、人口の約4分の1にあたる約1010万人が食糧不足に見舞われているとしている。緊急の支援が必要と訴えるビーズリー氏に文氏も共感を示したという。

 文政権は、米朝関係のあおりを受けた南北関係を立て直すためにも、食糧支援に向けた地ならしを進めようとしていた。まず、1回目のミサイル発射後の7日に開かれた文氏とトランプ大統領との電話協議で、食糧支援への支持を取り付けた。ところが9日午後、北朝鮮が2回目のミサイル発射に踏み切り、文氏は就任2年のインタビューで「食糧支援について米国との間で協議をしたのは(ミサイル)発射より前で、再び発射があったため、この点に関しては国民の共感と支持が必要だ」と発言。10日には金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一相は国会の最大野党「自由韓国党」所属の尹相現(ユン・サンヒョン)外交統一委員長に会い、青瓦台はこの問題を協議するため自由韓国党を含む与野党5党の代表会合を要請したが、支援に反対する自由韓国党は1対1の会合を主張し平行線をたどっている。

 一方の北朝鮮は、4月にロシアからの小麦到着を報じたことはあるが、基本的には食糧生産についても「自力更生」を掲げ、支援について大々的に触れることは控えている。食糧支援はあくまで人道的措置のため交渉の材料とはならず、北朝鮮を対話に引き戻せないとの指摘もある。

 朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は4月29日、政論「コメで党を支えよう」で、「自力で復興する新しい歴史を創造するこんにち、敵対勢力らの制裁、圧力策動を無慈悲に粉砕する勝利の砲声は農業部門から響かせなければならない」と主張。5月3日には「新たな土地を大々的に探し、耕地面積を増やそう」とする社説で「新たな土地を探す事業は敵対勢力の悪辣(あくらつ)な策動を粉砕して自力更生の旗高く前進する社会主義朝鮮の気概を示すための闘争の一環だ。耕地面積を増やすところに人民の食糧問題、食の問題解決の突破口がある」と訴えた。

毎日新聞

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