『Fate』15周年、成功の鍵はソシャゲ業界の“逆”をいく「KPI度外視」と「“活字”重視…

2019/02/12 08:40 

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『Fate/stay night 15th Celebration Project』のビジュアル (C) TYPE-MOON All Rights Reserved.

 PCゲーム『Fate/stay night』が1月30日、発売から15周年を迎えた。本作は2004年月30日にPCゲーム(発売:TYPE-MOON)として発売され、その後、『Fate』の世界観をベースにしたゲームやアニメ、映画として展開。中でも、『Fate/stay night』を元として製作されているスマートフォン専用ゲーム『Fate/Grand Order』(フェイト・グランドオーダー/通称:FGO)は、世界的な規模で支持される人気コンテンツとなっている。そこで今回、『Fate』という巨大IP(知的財産)に携わる、アニプレックス宣伝担当の金沢利幸氏と、『FGO』 第2部の開発ディレクター・カノウヨシキ氏に、『Fate』が15年にわたって支持される理由を聞いた。

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■“新たな血”を取り込み『MARVEL』や『DC コミックス』に近い作品性

 『Fate』シリーズが2004年にスタートしてから15年が経過。コンテンツとして拡大しつづけ、幅広い層を取り込みながら支持も拡大している。そんな『Fate』コンテンツの魅力についてカノウ氏は「ストーリー、キャラクター、作画はもちろん、サーヴァントの詳細な設定にハマる人もいます。そんな、さまざまな魅力があるのがコンテンツの力」だと説明する。

 そして何より、シナリオを手掛ける奈須きのこ氏へのユーザー支持が圧倒的なのだと言う。実際、『Fate』シリーズは毎年さまざまな新作が生み出されているが、この15年間、話がどんなに枝分かれしても、奈須氏の構築した世界観が根底としてあるため、「“Fateらしさ” がまったく損なわれないのだと思います」とカノウ氏。

 また、金沢氏は『Fate/stay night』から始まり、多くの作品へ広がっているという重層的な構造を持つ『Fate』シリーズについて、「『MARVEL』や、『DC コミックス』に近い作品性になってきているのでは」とコメント。続けて、「奈須さんと武内さんが中心となって作り上げたシリーズの原典となる『Fate/stay night』があり、そこから派生した『Fate』作品に多くの作家さんやイラストレーターさんが加わり、関わったクリエイターの数だけ世界が広がっている。それが『Fate』が15年続いている要因の一つなのでは」と語った。

 つまり、奈須氏が紡ぐストーリーや、武内氏が描いたキャラクターが15年を経ても色褪せず、むしろさらに進化発展しているのは、新たなクリエイターたちの“血”が加わることで、コンテンツとして“消費”されない鮮度を保ち続けているようだ。

■ファンの期待に応えるため、一般企業におけるKPIを“度外視”

 実際、その人気は圧倒的だ。モバイルゲームにおける、昨年上半期(2018年1月~6月)の売上1位は『FGO)』という調査結果もある(Mobile Index調査)。また、1月12日より公開中の『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly」』が公開2日間(1月12日~1月13日)の全国映画動員ランキングで1位を獲得。ゲームだけでなく、アニメや映画で高い支持を集め、メディアミックスの成功例における代表的コンテンツとなっている。

 とはいえ、人気IPをゲームとして成立させ、人気を維持する難しさについて、「昔からの人気ゲームやアニメをリメイクする際と同じで、ファンの皆さんが思う『こうあるべき』っていう理想と、新しく接する人に楽しんでもらうための“新要素”を両立させる難しさはあります」と、カノウ氏は率直に明かす。

 だが、『Fate』ではそうした点において、“ファンの期待を裏切ることは決してない”という明確な考え方があるのだそう。

 「それがまさにTPIという言葉に凝縮されています。これは造語なんですが,“TYPE-MOON Performance Indicator”の略です。具体的には、企業の一般的な指標になるKPIなどデータに基づく意思決定を優先せず、誰よりもコアユーザーであり、『Fate』シリーズを愛している(原作を手掛ける)TYPE-MOONさんの導く指標に従っていれば、ユーザーの想いに対して絶対的に応えられるはずだ、という考え方です」(カノウ氏)

■ソシャゲの常識を覆す“活字量”は、文庫本40冊に相当

 昨年、ゲーム内でのメインストーリーの第2部がスタート。『FGO』といえば、ストーリーの活字量も話題だ。以前、『FGO』の活字量は200万字以上と公表されていたが、現在では500万字以上になっているという。

 その点についてカノウ氏は、「1冊300ページの文庫本がだいたい10万~15万字ですから、『FGO』をプレイしている方は、単純に文庫本を40冊くらい読んでいることになりますね」と笑顔で話す。一般的なスマートフォン向けゲームの場合、逆に文字数は制限するのが普通なため、これこそ「『FGO』ならではの魅力」だと強調する。

 そもそも“ソシャゲ”が流行ったのは、シンプルで気軽にプレイできるから。しかも、昨今のゲームのトレンドはソーシャル、いわゆる他者との“繋がり”。だが『FGO』では物語を体験することを優先しているのだそう。カノウ氏によれば、「第1.5部からは、集中してストーリーを読んでいただきたい部分については、バトルが必ずあるわけではないという構成になっています」と解説。ここでも、“バトル重視”のソシャゲ業界の逆を行く手法が見てとれる。多くの『FGO』ユーザーにとっては、ライターが描く物語、世界観、キャラクターが一番の魅力であり、その世界観に浸るための手法として、活字が大きな役割を果たしているようだ。

 これまで、幾度となく繰り返されてきた“若者の活字離れ”というフレーズ。しかし、『FGO』が支持され続ける現状や、昨今のラノベ人気、そしてネットへの接続時間の長さを考えると、若者が活字と接する時間はむしろ増えているという声もある。“活字は読まれない”という固定概念にとらわれず、ソシャゲ業界の“逆”を攻め続けたことも、『Fate』が15年にわたって愛される理由のひとつなのかもしれない。
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