高崎高島屋バイヤーが選ぶ逸品、日本橋で評判 3000円靴下も好評
高崎高島屋には隠れた人気店がある。世界的な有名ブランドではなく、岐阜の靴下や愛知の毛織物など、日本中の産地から上質な商品を集めた「メゾン・ド・F」だ。9月には日本橋高島屋に1週間限定で出店し、予想の2倍を売り上げた。【山越峰一郎】
店名の「F」には、ファクトリー(工場)やファインド(発見)など四つの意味が込められている。産地を巡り、目利きして集めた上質な商品を並べる「セレクトショップ」の業態だ。国内のアパレル工場と直接取引し、作り手の熱い思いも届ける。
約50のブランドが並ぶ中でも、人気商品の一つが、刺しゅうアクセサリー「トリプル・オゥ」だ。桐生で明治10(1877)年に創業した笠盛が培ってきた技術で編み出した立体刺しゅうのネックレス(4400円~)などを買い集める固定ファンがいる。東京・葛飾の長沢ベルト工業による、本革なのに伸びるベルト(1万4300円~)は大好評で、日本橋高島屋での取り扱いも決まった。
バイヤーを務めるのは、紳士服・紳士雑貨・スポーツ部次長の中里康宏さん。きっかけは2014年、顧客にシャツの製法を聞かれ、答えられなかったことだった。自腹で静岡の織物工場へ見学に出向くと、現場から感謝され、商品の魅力をより深く知ることができた。そうして各地の工場を回り、店頭に並べると、予想以上の反響があった。
19年、社内起業制度に応募。役員から「百貨店の原点だ」と高評価を得て、実現した。開店は新型コロナウイルス流行下の20年で、15平方メートルに10のブランドを並べた。それでも顧客は足を止めた。中里さんは「知名度がなくてもこだわれば届くと実感した」と振り返る。21年にはテレビ東京の番組「ガイアの夜明け」で特集され、売り場は80平方メートルにまで広がった。
9月には日本橋高島屋に1週間限定で出店。「販売は絶好調で、予想の2倍売れた」という。岐阜の東洋繊維の靴下(3000円)は500足を売り上げ、東京のチ・ワタの革かばん(約8万円)も数多く売れた。
日本橋でも好評を博し、隣県や首都圏から高崎高島屋に足を運ぶ人もいる。しかし、全国展開は考えていないという。中里さんは「地方が苦戦する中、高崎を盛り上げたいし、丁寧に売るために店頭に立ち続けたい」と話す。ネット通販は強化する予定で、店頭と同じ規模まで育てるのが目標だ。
ものづくりの未来も見据える。「商品を作っている工場もそうだが、それ以上に製糸などの川上が後継者不足だ。売るだけでなく、産地も知ってもらい、盛り上げたい」と中里さんは考えている。
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