電気・ガス、ガソリン…補助金の終わり見えず 事業の出口戦略に注目
22日に閣議決定された総合経済対策で、10月で終了した電気・ガス料金への補助金を来年1~3月に再実施することが決まった。年内を終了期限としていたガソリン補助金も規模を縮小して延長する。政府は時限措置だった補助金の終了に踏み込めずにいる。
暖房需要で電力の消費量が最も増える1~2月は家庭向けで電気は1キロワット時あたり2・5円、ガスは1立方メートルあたり10円を補助する。電気代は標準家庭(使用量400キロワット時)で月1000円の補助となり、ガス代と合わせると計1300円程度の負担軽減になる。3月は電気1・3円、ガス5円に補助額を縮小する。
電気・ガス代への補助金は、ウクライナ危機に伴う燃料価格の高騰対策として2023年1月使用分から開始。その後、燃料価格が落ち着いたため24年5月分でいったん終了した。しかし、岸田文雄前政権が酷暑対策として8~10月の限定で電気は最大1キロワット時あたり4円、ガスは同1立方メートルあたり17・5円の補助を復活。今回、またも終了直後に再開が決まった形だ。
一方、ガソリン価格を抑制するため22年1月から続いている石油元売りへの補助については、12月から段階的に補助の規模を縮小させるものの、年明け以降も延長する。
来年1月中旬のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は約180円、2月中旬には約185円になる見込み。それ以降は月5円程度の価格上昇となるよう補助率を見直す。終了時期は定めていない。
10月の衆院選中には公明党が「寒い時期が一番電気・ガス代がかかる」として経済対策に盛り込むよう要求し、石破茂首相も「電気代が上がって困る人には十分な支援を行う」との意向を表明。選挙の結果、衆院で過半数割れし少数与党となった自公と政策協議していた国民民主党も値下げを求めていた。
電気・ガスやガソリン代に対する補助金が長期化していることに対し、「市場原理を無視している」「脱炭素に逆行している」といった批判の声が噴出している。だが、酷暑対策で補助金が復活した際には「絶対に冬もやることになる」(経済官庁幹部)と政府内には諦めムードが広がっていた。
電気・ガス補助金は問題も指摘されている。会計検査院の調査によると、補助金事業の事務局業務を319億円で受託した広告大手の博報堂が、業務の大部分を子会社などに委託し、さらに別会社に再委託されていたことが判明している。
業務委託費率が50%を超える場合は所管する資源エネルギー庁に理由書を提出する必要があるが、書類には委託が必要だとする理由が具体的に記載されておらず、エネ庁にも委託を認めた経緯の記録が残っていなかった。
経済産業省の事業では、過去にも新型コロナウイルス禍を受けた中小企業向けの持続化給付金を巡り、事業を受託した一般社団法人が大半の業務を再委託していたことが発覚して問題になったこともある。
エネ庁の担当者は「今後、同じように再委託があればどういう形で適切と判断したのかが残るように手続きを検討している」としている。
経産省は今回の補助金の再開・延長で必要な予算額を明らかにしていないが、これまで投じられた累計額だけで電気・ガスは約4兆円、ガソリンは約7・1兆円と既に計11・1兆円に達している。ガソリン補助金は間もなく開始から3年がたつ。膨大な税金を投じた補助金事業の出口戦略を描けるかにも注目が集まる。【高田奈実】
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